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持続可能な学びの仕組みと「道具」の選び方

公開日:2026.02.06
持続可能な学びの仕組みと「道具」の選び方

【この記事の要約】 eラーニング内製化の成功は「持続可能な仕組み作り」にかかっています。自社に最適な配信ツール(LMS)の選定と、役割分担によるチーム体制を構築し、学びを「組織の資産」として蓄積・更新し続けるコツを解説します。

eラーニング教材内製化の連載シリーズも、いよいよ最終回です。

第1回では、ビジネス成果へ繋げるための「設計図」の描き方を、第2回では、対面の熱量をデジタルへ翻訳し、受講者の「行動を変える」コンテンツ制作の実践テクニックを共有しました。

しかし、素晴らしい教材を1本完成させても、それが単発の取り組みで終わってしまっては、戦略的な教育基盤とは言えません。担当者の異動とともにノウハウが失われたり、更新されずに内容が陳腐化したりする「負の遺産」化は、多くの現場で直面する課題です。

最終回となる第3回は、内製化のサイクルを「一過性のイベント」にせず、組織の仕組みとして継続・効率化させるための「体制構築」と「ツール選定」のポイントを解説します。

<この記事はこんな方にオススメです>

  • 内製化を個人のスキルに依存させず、組織の仕組みとして定着させたい方
  • 自社に最適なLMS(学習管理システム)や作成ツールの選び方を知りたい方
  • 限られたリソースの中で、内製化を「継続」させるコツを掴みたい方

 【ツール編】目的から逆算するツールの選び方

内製化を効率化し、学びを蓄積するために「道具」の選定は欠かせません。ただし、多機能なツールを導入すれば解決するわけではなく、目的意識を持った選択が重要です。

LMS(学習管理システム)と作成ツールの役割分担

まずは、内製化を支える2つの柱の役割を整理することから始めます。

  • LMS(学習管理システム): 教材を「配信」し、受講者の進捗や成績を「管理」するプラットフォームです。誰がどこまで学んだかを可視化し、組織全体の学びを統制する土台となります。
  • 作成ツール(オーサリングツール): PowerPointのスライドを動画化したり、インタラクティブなテストを作成したりと、教材そのものを「作る」ための道具です。

以下の表に、それぞれの役割の違いをまとめました。

作成ツール(Making) LMS(学習管理システム / Managing)
主な役割 教材そのものを「作る」 教材を「届けて管理する」
具体的な機能 資料の動画化、テスト・クイズ作成 受講権限の付与、進捗管理、
成績分析
成果物 教材パッケージ(SCORM形式等) 受講ログ、学習レポート

【選定のヒント】 まずはLMSを導入し、その標準機能で教材を作成・運用してみるのが着実なステップです。より表現力豊かな教材や、高度なテストが必要になった段階で、専用の作成ツールを検討するのが、コストと手間のバランスを保つコツと言えます。

活用のヒント:PowerPoint資産をそのまま活かす!教材作成・配信一体化の実現

教材の配信・管理を行うプラットフォームとして「LOGOSWARE Xe」を活用するのも、内製化を加速させる一つの選択肢です。

 Xeには、「STORM」や「THiNQ」(第2回:制作編にて詳述)といった作成ソフトがセットになったオプションプランが用意されています。 実際、当社でLMSをご利用中のお客さまの多くは、配信システムと作成ツールを個別に検討する手間が省けるこの「ソフト付きプラン」にメリットを感じて導入されています。
作成から運用、受講データの分析までを一気通貫で行えるため、内製化をよりスピーディーに軌道に乗せられます。

ビジネス視点で選ぶ「SCORM規格」の重要性

将来的にツールやLMSを乗り換える可能性を考えると、「SCORM(スコーム)」という共通規格への対応が重要な視点となります。 SCORMに対応した教材であれば、異なるLMSへ移行しても学習履歴(進捗や合否)を正確に引き継げるからです。PowerPointの動画書き出しだけでは取得しにくい「詳細な学習データ」をビジネスの資産として蓄積するために、この規格への対応状況を確認しておくことが有効です。

昨今の相談傾向:手持ちの動画を「資産」に変える

昨今の動画作成の手軽さや、ビジネスのスピードアップを反映して、当社へのご相談内容にも変化が見られます。 たとえば、従来のPowerPointベースの教材作成だけでなく、「手元にある動画ファイルをそのままSCORM化したい」というお問い合わせが非常に増えています。

撮りためた操作解説動画やセミナー動画を、単に共有フォルダに置くだけでは「誰がどこまで見たか」を把握できず、教育成果を測定できません。 こうした課題に対し、「LOGOSWARE STORM」は、単純な動画のSCORM化はもちろん、インデックスや字幕を付与した高度な出力まで、はやく、簡単に対応できるツールとして多くの現場で選ばれています。

また、変換作業を行う時間すら惜しいという場合には、お客さまの切実な需要から生まれた「動画のSCORM化サービス」という選択肢もあります。アウトソーシングをうまく活用し、コア業務である「教育設計」に集中する体制を整えるのも、一つの賢い戦略です。

【参考リンク】 動画のSCORM化について、当社制作サービスチームがポイントをブログにまとめています。 動画のSCORM化:メリットと手順(制作サービスブログ)

【体制編】属人化を防ぐ「チーム」での取り組み

ツールが「車」なら、体制は「運転手とルール」です。内製化を持続させるには、特定の担当者に依存しない仕組みづくりが求められます。

役割分担とスキルセットの整理

内製化は一人ですべてを抱え込むと、必ず限界が訪れます。プロフェッショナルな品質を維持するために、以下の役割を分担する視点が有効です。

  • 企画者(ディレクター): 全体の設計(ストーリー作り)を担うプロジェクトの責任者。
  • 専門家(SME):現場の生きたノウハウ(正しい知識)を提供する担当者。
  • 制作者(クリエイター): 設計に基づき、ツールを使って形にする担当者。
    ※兼務でも可。ツールを使えば、企画者が制作者を兼ねることも容易です
  • レビュアー(品質管理者):  公開前に「第三者の目」で内容をチェックする担当者。

 

属人化を回避する「レビューフロー」と「標準化」

担当者によって教材のクオリティがバラつくのを防ぐには、個人のセンスに頼るのではなく「仕組み」でカバーします。

  • レビューフローの確立: 「SMEのチェックと企画者のプレビューを経て初めて公開できる」といった承認プロセスを定めます。
  • ガイドラインの作成: 使用するフォントや配色、ロゴの配置、話し方のトーンなどを簡易的なガイドラインとしてまとめるだけで、組織としての統一感が生まれます。

eラーニング内製化に関するQ&A

最後に、運用を始めるにあたってよく寄せられる疑問について、私たちの視点でお答えします。

Q1. リソース(人・時間)が足りない場合の現実的な対策は?

  • 「内製化支援サービス」や「既存コンテンツ」とのハイブリッド運用をご提案します。 すべてを一から作る必要はありません。第1回で整理した通り、汎用的な知識は外部の受け放題サービスを活用し、自社は「独自のノウハウ」にリソースを集中させます。また、企画や編集の初期段階だけをプロの支援(内製化支援)に任せ、運用から自走する形も、成功確率を高める賢い選択肢です。事例を元にしたハイブリッド運用について詳しい記事がありますので、ご参考になさってください。

【参考リンク】事例に学ぶ!「カスタムメイド・共創モデル」で教育ビジネスを加速させる鍵

Q2. どこから着手するのが最も効果的か?

  • 現場で「同じ質問が繰り返されている」など、最も困っている特定のテーマ1本に絞って着手してください。 いきなり全社的な教育カリキュラムを網羅しようとすると、完成までに膨大な時間がかかり、途中で挫折しがちです。まずは以下のような「キラーコンテンツ」の作成を目指しましょう。
  • 新人からの頻出質問: 「ツールの使い方が分からない」など、教える側の時間を奪っているもの。
  • 現場の失敗事例: 「ここを間違えると大きなトラブルになる」という重要ポイントの解説。
  • 成功者のコツ: ベテランの暗黙知を言語化した短い動画。

まずは1本、現場の課題が解決したという「成功体験」を作ることが重要です。それが周囲の協力体制を引き出し、プロジェクトを継続させる最大の原動力になります。

まとめ:内製化は「完璧」より「改善」を目指す活動

全3回にわたり、eラーニング教材内製化のヒントを解説してきました。

  • 第1回: 顧客の成果(行動変容)を見据えた「設計図」を作る。
  • 第2回: デジタルの特性を活かし、学びを蓄積する「教材」へ昇華させる。
  • 第3回: サイクルを回し続ける「体制」と「ツール」を整える。

内製化は、一度作ったら終わりの完成品ではなく、現場の変化に合わせて育てていく「プロセス」そのものです。 最初から100点を目指すのではなく、まずは必要最小限の情報を網羅した60点の教材を素早くリリースし、受講者の反応を見ながら改善を繰り返す。
この軽快なフットワークこそが、汎用的な教材では決して真似できない、自社内製教材だけの真の価値です。皆さまの持つ貴重なノウハウが、最適なデジタルの形となって、より多くの成果を生むことを願っております。


【参考文献・参照リンク】

  1. eラーニングの標準規格について
    日本イーラーニングコンソーシアム(eLC)
    SCORMなどの技術標準や、eラーニング導入のガイドラインに関する最新情報が提供されています。
    https://www.elc.or.jp/
  2. 学習管理システム(LMS)の選定と活用
    経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」
    企業におけるリスキリング推進の指針や、システム活用の事例が参考になります。
    https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/index.html
  3. 著作権保護とビジネス実務
    公益社団法人著作権情報センター(CRIC)
    企業内での著作物利用や、LMSを通じた配信における法的留意点が詳しく解説されています。
    https://www.cric.or.jp/
  4. 動画のSCORM化
    ロゴスウェア制作サービスブログ:動画のSCORM化

    当社の制作サービスチームが多くの制作経験を活かしたコツをまとめたブログです。「動画のSCORM化」カテゴリにはSCORM化の重要性や変換方法等をご案内しています。
    https://service.logosware.com/category/service-blog/video-scorm-comversion/
この記事を書いた人
清水
清水マーケティンググループ
デザイナー兼マーケ担当。デザイン制作で培った「ユーザー視点」を大切に、ユーザーファーストな記事執筆を心がけています。デザインとデータの両面から、皆さまの課題解決に役立つ情報を整理してお届けできるよう頑張ります!