新・企業内大学とは

企業内大学はコーポレートユニバーシティとも呼ばれ、日本では、2000年代に大企業を中心に「幹部候補生の育成」として導入されてきました。

昨今、DXやAIの普及に伴い、企業は人材育成の在り方を再構築する必要に迫られています。
その結果、企業内大学をリスキリングやキャリア開発の手段として活用する企業が増加しています。

ロゴスウェアでは、このリスキリングやキャリア開発に使われる企業内大学を「新・企業内大学」と定義しました。
ここでは、新・企業内大学がリスキリングやキャリア開発で注目される理由を解説します。

そもそも企業内大学とは

企業内大学とは、自社の社員に対して教育・研修を行うために企業が設立するものです。

複数の講座が設置され、社員は自ら選択して受講することができます。

大学のようなカリキュラムの構造を持つことから「大学」と命名されていますが、建物を建てたり、専門の教育部門を設立するというわけでなく、経営戦略と連動し、戦略的に人材育成するしくみのことを指しています。

「従来の研修」と「企業内大学」では目的が異なります。従来の研修は短期的、単発のスキルアップなのに比べ、「企業内大学」は中長期的な人材育成を目的としています。

具体的には、【現在の人材(As-is)】を【経営戦略上必要なスキルを持った人材(To-be)】にリスキリングし、As-is / To-beギャップを埋めるのが目的です。

従来の研修 企業内大学
目的 目の前の業務遂行のため 中長期的な人材育成
As-is / To-beギャップを埋める
期間 単発・短期 継続的

企業内大学研究の第一人者である、国立大学法人宇都宮大学 大嶋 淳俊 教授は「企業内大学」を以下のように定義しています。

「企業の経営戦略と人材戦略の下,大学のように目的別に多様かつ体系化された教育研修の提供に加えて、企業理念の浸透や組織文化の醸成を実現するための人事制度・組織」

「企業内大学~戦略的人材成長基盤としてのコーポレートユニバーシティ~」より引用

企業内大学の変遷

いままでの企業内大学は、幹部候補生の育成、つまり次世代リーダーの輩出育成が目的として設立されていました。
しかし、昨今では目的を拡大してリスキリングや、キャリア別の能力開発に使われるようになっています。

これを、我々は「新・企業内大学」と定義しました。

旧・企業内大学 新・企業内大学
目的 幹部候補生の育成 リスキリング
キャリア別能力開発
幹部候補生の育成
対象 リーダー候補 全社員
手法 集合研修 ブレンデッド(集合研修・オンライン)

リスキリングが注目される理由

そもそも、なぜ人材育成でリスキリングやキャリア開発が注目されているのでしょうか?
従来の日本企業の人材開発は新入社員期に大きく投資し、あとはマネージャー期に少し投資するものでした。

人材開発の現状~日本的雇用慣行の衰退に対応不能~

出典:「女性の視点で見直す人材育成」中原 淳

しかし、社員教育が大きく変わりつつあります。その理由は、DXやAIの進化と人材不足です。

ビジネスがデジタル化されるなか、社員はデジタルスキルを習得して、業務を移行する必要があります。また、人材不足も深刻な問題です。経験豊富なベテラン社員の定年退職や働く人の減少が、企業に影響を与えています。

そのため、企業はリスキリングを通じて戦略に合った人材育成を行う必要があります。単発の研修やOJTだけでは対応が難しいため、継続的な学びを提供する企業内大学が注目されています。企業の規模にかかわらず、効果的な手段として再評価されています。

なぜ新・企業内大学がリスキリングで採用されるのか

リスキリングには多岐にわたる手段が存在します。

例えば、従来の研修のように、OJTを行ったり、一部の社員を外部研修に送ったり、学び放題のオンライン講座で知識を付けさせる方法もあります。
このような手法は短期的な成果をもたらすかもしれませんが、その効果は一時的なものに過ぎません。

一部の社員が知識やスキルを獲得したとしても、それを全社員に波及させなければ意味がありません。
また技術は目まぐるしいスピードで変わっていくため、一時的な学びだけでは追随していけません。

そこで近年、企業内の戦略に合わせた継続的な学びを構築する場として「新・企業内大学」が再び注目されています。

継続的な学びは以下のように構築していきます。

  1. 「経営戦略の実現に向けた求める人材像(To-be)」を明確にし、それに基づいたスキルマップを定義
  2. 必要なスキルを獲得するための研修プログラムを設計
  3. 各社員は、自身のポジションにおいて不足しているスキルを研修プログラムから習得

このサイクルを回して、リスキリングを促進していきます。

リスキリングに使われる新・企業内大学の実例

多くの日本企業でもすでにリスキリングの手段として新・企業内大学が活用されています。

イオン株式会社:イオンデジタルアカデミー

「皆が変革をどこか他人事のように捉えていたため、このままでは必要なデジタル変革が起きず、イオンの将来すら危ういという危機感を抱きました。この問題を解決するには、スピード感を持ったリスキリングによる人材育成と、それを支える企業文化醸成が不可欠でした」そこで櫻庭氏が立ち上げたのが、『イオンデジタルアカデミー』です。

AWS Leaders' Voice:イオン株式会社 | AWS

https://aws.amazon.com/jp/solutions/case-studies/aeon-leaders-voice/

三菱倉庫株式会社:MLCアカデミー

企業内大学「MLCアカデミー」(以下「アカデミー」)を開校しました。
開校の目的、方針等については以下のとおりです。

アカデミー開校の目的

デジタル化、グローバル化等外部環境が激しく変化する中、MLC2030ビジョン/経営計画の達成には、従来のゼネラリストに加えて、変革を起こすリーダーやM&A、デジタル化及びSDGs対応等を推進できる専門人材が不可欠です。これらの人材を中長期的・計画的に育成するために、現在の人材教育システムを発展させる形で「会社の事業成長と個人のキャリア形成を支援する」をコンセプトに全社員を対象に継続的、自律的に学習することのできる教育環境を整備しました。

アカデミーの教育方針

  1. 自律的学習・キャリア形成の推進
    社員の新しい知識やスキルを学び続ける意欲を育み、自己成長に繋げることで変化への対応力を養います。
  2. 実践に即したカリキュラムの提供
    各業務に必要な専門性や社内経験知の蓄積・共有を促進するカリキュラムを提供することで、事業戦略の実現に必要な知識やスキルの習得を支援します。
  3. 次世代リーダー等の育成
    自ら変化を創り出し、挑戦やイノベーションを主導できる人材を育てます。

カリキュラム

従来の階層別研修、語学、資格取得講座に加え、専門性を獲得する講座、ベテラン社員による社内経験知共有講座、社員の声から生まれた「失敗事例の共有」講座、異業種との交流講座、外部教育機関への派遣等、多彩なコンテンツを提供します。

企業内大学「MLCアカデミー」を開校 | 三菱倉庫株式会社

https://www.mitsubishi-logistics.co.jp/news/2024/20240415_01.html

新・企業内大学の課題と解決

とはいえ「大企業の話では?わが社には無理」と思っていませんか?
企業内大学は従来の研修に比べ、考慮すべきことが多く、運用の手間が増えるため、二の足を踏んでしまう人事担当者の方は多いと思います。

しかし、ロゴスウェアは、リスキリングの必要性はどの企業にとっても同じであり、むしろ、スピードを武器にする中規模、小規模企業こそが、リスキリングを成功させて競争優位性を確保しなければならないと考えています。

そのため、ロゴスウェアでは「100人の会社でも1万人規模の会社の新・企業内大学を実現する」ことを目標に新たなラーニングプラットフォーム「LOGOSWARE Xe」を開発しました。

LOGOSWARE Xeは新・企業内大学をスムーズに構築・運営するための5つのポイントを兼ね備えています。

LOGOSWARE Xeを活用すれば効率的に新・企業内大学を構築できるでしょう。